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占い現場報告書

占いの館利用レポート

第11回 九州の某都市、駅前商店街の占いの館

親友にも友人にも同僚にも家族にも、相談することはしてみたけれども、どれも私が求めているものにピンとくる答えは得られませんでした。いったいなぜでしょう…。 私が思うに、その人その人の立場によって見方が違うからアドバイスも変わってくるのではないでしょうか。私の性格や考え方をよく知っている親友は、それなりに正しい事を言うし、友人や同僚だと話を少しでもおもしろい展開を期待するような素振りを見せます。家族は世間体や体裁を気にした無難な結果を望んでいるように思えて、私の気持ちを本当に理解している人はこの世にいないのだとすら感じました。そんなとき、ふと目に入ったのが「占いの館A」。占いというものはあまり信じていませんが、相談相手としてはちょうどいいのかもしれないし、何より私を知らない人に客観的な意見を言ってもらいたいという動機で足を踏み入れてみました。

 「ようこそ、いらっしゃいませ」
 ドアを開けて目の前にいたのは受付の方でした。名前や年齢、生年月日といった基本的な情報から悩みの内容までを記入していきました。ヒーリングミュージックやアロマディフューザー、小綺麗に整えられた待合室はリラックス感あふれる雰囲気でした。
 「ありがとうございます。それではこちらへ」
通されたのはワンルームくらいの間取りの部屋で、思ったよりも広く、そして明るい。想像していたのは薄暗い部屋で、不気味なインテリアに囲まれながら水晶を挟んで占い師と向き合うような構図だっただけに意外に感じました。占い師の先生と向き合って、簡単に挨拶を済ませました。
 「今回、タナカさま(仮名)の担当をさせていただくAです。よろしくお願いいたします」
礼儀正しく、好印象の先生が現れました。年齢は30代前半といった様子で、特に占い師にありがちな特徴はなかったですが、同性から見ても美人だなと言える印象でした。
 「どうぞ、おかけになってください」
お茶を差し出されるのと同時に、私は相談の内容を頭の中でまとめていきました。どこから話すべきか考えているのを見抜かれたかのように、先生は穏やかな表情で雑談を始めました。
 「こうした占いは、よくされるのですか」
 「いえ、実は初めてです」
 「そうですか、それはよかった」
それは私が素人だからだろうか、騙しやすいと判断されたのだろうか。そんな考えが頭をよぎったところで、先生はやさしく言葉を続けました。
 「タナカさまの周期において、今日は物事を始めるのにちょうど良い日とあります。この日に何か初めての体験をされると、それが上手くいって将来の成功にもつながるとでていますよ」
そう言われては、何も悪い気はしませんでした。このひと言で警戒心は解けて、すんなり相談の本題に入れた気がします。

 「いま付き合っている彼と、将来的にどうなるのかがまったく見えてこなくて不安なんです。お互い仕事はこれから忙しくなってくるし、精神的な余裕がなくなってギスギスしそう。ただの倦怠期とも違うようだし、中途半端な付き合いを続けるべきか迷っています」
この悩みを打ち明けると、親友は「今は耐える時」だと言い、友人や同僚は「仕事に集中した方が良い」と言い、家族は「彼を大事にしなさい」と言いました。しかし私は彼か仕事かどちらか一つなんてとても選べない。この葛藤を抱えた日々に疲れ切ってしまい、もはやすがりつくような気持ちになっていたのです。先生は一体どのようなアドバイスをくれるのか。言葉を待って緊張が高まる。すると落ち着いた口調で話し始めました。
 「タナカさまの仕事内容は存じ上げませんが、これから気運に乗って順調な成果を上げるものと見えています」
 ひとまずは安心感が生まれました。「それで、どうなりますか?」と思わず気が急いてしまいました。
 「彼の方の仕事は……残念ながらめざましい飛躍を遂げるとは出ていません」
 「ということは……」
やはりどちらかを諦める他ないのかと、不安が頭をよぎったのでした。
 「しかし、彼はその停滞期が長く続きますが、それを乗り越えれば大きな好機に恵まれやすく安定した人生を歩めることになるでしょう。逆に貴女の方の運気が低下する時期にも、二人の絆が固く結ばれていれば協力しあって乗り越えられるはずです。未来の不安はいつでもどこにでもあるものなので、今はそれを乗り越えるためにお互いを思いやる期間なのではないでしょうか」

 今は不確実かもしれないけれど、お互いを信頼しあうことが何よりも大切。不安について悩むよりも、どうすればより良い将来を描けるかを考えた方がいいに決まっている。私はこんな簡単な答えにたどりつくことができませんでした。
 「もちろんおわかりかとは思いますが、ただ私が行った占星術にそのような周期にあるというだけで、決して確実なものではありません。しかしあなたの決断を後押しするものであれば、きっとそれが始めから用意されていた運命なのだと私は考えています」
 人生は何が起こるかわからない。そんな当たり前のことに思い悩むよりも、いかに自分にとって良いものを引きよせられるかが大切なんだ、と心に沁み入る私でした。ハッキリ言うと、今回のケースは目からウロコというようなアドバイスではないのかもしれません。しかし誰よりも冷静に、私の心の奥底に潜んでいた決意を見抜いて肯定してくれたことが何よりも嬉しかったのです。自分にとって大きな問題であるだけに、つい視点が限られてしまったのかもしれません。そういった意味で、占い師に相談してみることに大きな意味があったように思うのです。私たちの将来をどうするか。それを彼にも話し、最善の結果を目指していく決心がついた日になりました。

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