第7回　占いジプシーだった私を変えた占いの先生

次から次へと色んな占い小屋に駆けつけていた占いジプシーだった私が、やっとの思いでめぐり合えたのが駅前にある占いの館の占い師Ａさんでした。当時、付き合っていた彼がいましたが、急に連絡が途絶え、やきもきしていたとき足を踏み入れたのが始まりでした。

Ａさんはかなり人気の占い師で、いつも予約でいっぱいですが、丁度、平日の昼間に店を訪れたこともあり、あまり待たずに占ってもらえました。主な占術は四柱推命をはじめとする東洋の占い。彼が私を避けている、音信不通だと悩みを相談したところ、Ａさんは生年月日をもとに二人の命式を書き出し、サイコロのようなものを投げました。

「こりゃ、駄目よ。この男は駄目、駄目。あんたのことを全然思いやっていない。かなり女癖が悪い。トラブルメーカーだから、さっさと完全に別れなさい。あんた今にとんでもない目に遭うよ」こう言われたのです。フォローの無いはっきりした口調にギョッとしました。けれど、彼は魅力的な人です。Ａさんには彼との付き合いを止められたけれど、彼を忘れることなんてできません。しかし、それを口には出さず、納得したフリをして店をあとにしたのです。

が、大間違いでした。後日、とんでもない出来事が私を襲いました。1ヶ月後、彼が私の元に戻ってきて復縁を果たしましたが、彼はそれから半月も経たないうちに私のクレジットカードを盗んで高額の商品を買いまくったのです。しかも、見知らぬ女が激昂した声で電話を掛けてきて、彼の奥さんだと名乗ります。私と連絡を絶っていた数ヶ月の間に別の女性と結婚していたのです。新婚早々、奥さんと不仲になり私とよりを戻そうと厚かましい行動を…。さすがの私も、別れを決意しました。心身ともボロボロです。

また、丁度、その頃、親友も酷い男性と付き合っていて、彼女もトラブルをかかえていました。その内容は、彼女との性行為を彼が隠し撮りして、友人たちに見せて楽しんでいたという恐ろしいもの。彼女にも心底同情しました。自分、そして身近な女友達も男性に騙されていて、私はもう男性という存在自体を信じられない気持でした。けれど、このまま一生を男性不信のまま寂しく過ごすというのは、やりきれない。だから、もう一度、Ａさんに見てもらおうと思ったのです。忠告を無視した手前、行きづらかったのですが、思い切って足を運びました。

「だから、やめときなさいって言ったでしょう！」事の顛末を話すと、Ａさんは開口一番、私を叱り飛ばしました。『うわっ、キツイ』とても怖かったのですが、真剣に幸せになりたかったので、将来について相談しました。すると、私の顔をじっと見つめながら、こう言ったのです。「あなたは仕事運が良くて、仕事を頑張れば頑張るほど男運も上がっていく。そのうち痩せた身体つきをした目の細い男があんたの前に現れるよ。やさしい男だけれど、甲斐性はそれほどないからそこは妥協しなさい。とにかく、明日から仕事を熱心に頑張ること！」あまり細かい指示がなく残念でしたが、言われた通りに翌日から猛烈に仕事に打ち込みました。飛び込み営業の件数を増やすなど、今までの倍の勢いで働きました。すると、3ヶ月後に取引先の人から食事に誘われ、交際を申し込まれたのです。相手の男性はＡさんが話していたとおりの人です。「また占いが的中した」と感激しましたね。彼は経済力がある人ではありませんが、本当に誠実でやさしい人です。

自分だけが幸せでいるのは良くない。私はさっそく、打ちひしがれていた例の親友にもＡさんを紹介しました。彼女もＡさんに観てもらい、なにか有益なアドバイスをいただいたようです。あまり目立つタイプではなかったのに、男性からどんどんデートの誘いが舞い込むようになったと言います。しかも、どの人も真面目なタイプ。「占いがこんなに当たるなんて。Ａさんのおかげで運が開けてきた」一時は男性恐怖症になっていた彼女ですが、笑顔が戻ってきました。ホッとしました。

そして、ふと気づいたのですが、2回目にＡさんに占ってもらったとき、確か、生年月日などのデータを何も聞かれなかったのです。以前、観てもらったときの資料も取り出していなかったし、ただ、私の顔をしばらくジーッと見ただけで、占いの結果を告げられました。Ａさんは目に特徴があって、強めの斜視で、一方の目ではこちらを真っ直ぐに見ているのですが、もう一方の目で背後を見ているような感じです。自分の後ろにいる誰かに向かって話しているようにも思えました。Ａさんは一般的な占術を駆使するだけでなく、特別の霊感も備えた人なのでは…そんな気がしました。親友に話したところ、彼女も同じ意見です「頼りになる占い師さんだわ」。

以来、私と彼女はすっかりＡさんに心酔しています。すべての人がＡさんに満足できるわけではないと思うけれど、誰にでも「この人だ」と思えるよく当たる相性抜群の占い師さんがいるはず。貴重な出会いを大事にしたいですね。