転職した会社の人間関係が悪くて、毎日、暗い気分でした。女性社員が二つの派閥に分かれていて、入社間もない私は双方から「ウチの派閥に入れ」とプレッシャーをかけられていたのです。でも、そんなこと決められないし、どっちつかずの態度をとっていたら、片方の派閥のボスが私にイヤミを言い始めました。いじめというほどではありませんが、「この人は優等生タイプだから、自分は誰とでも上手くやっていけると思っている」など何かの拍子にチクリとイヤミを言います。表では気にしないフリをしていましたが、辛くなり、占い師の先生に相談することにしました。
向かったのは以前、一度、利用したことがあるファッションビル内の占いの館です。前回と同じく、中年のおばさん占い師が、西洋占星術とタロットで占ってくれました。結果を聞くと、派閥のボスは自分に従わない人間はすべて嫌悪するタイプらしく、私は当分、ネチネチとイヤミを言われるということでした。しかし、1年ぐらい辛抱すれば、事態は改善されるとも言われました。それまで、辛くても耐えなければいけないのかと思いましたが、他に言われたことも当たっていたし、受け止める覚悟を決めました。あと、そのとき、先生が私に勧めたのが水晶をお守りとして持つことでした。店の入り口付近で展開しているパワーストーン販売コーナーに連れて行かれ、水晶のブレスレットを取り上げ「これなんて、事態改善に役立ちますよ」と言われました。でも、『なんだか、霊感商法みたい……』とちょっと不信感を抱き、購入しませんでした。
しかし、次の日、街で偶然、別のパワーストーン専門店を見つけ、好奇心で入ってみたところ、ひとつの水晶に無性に心を奪われました。水晶のトップがひとつぶら下がっているだけのシンプルなペンダントでしたが、なぜかそれが欲しくてたまらない気持ちになったのです。値段が手頃で結局、購入しました。家であらためてつけてみると、気持ちがスーッと透明になるような不思議な感覚に包まれました。「これはいい!」と思い、会社に行くときも身につけようと思いました。
すると、どうでしょう。水晶のペンダントをつけた日から一週間後、例の派閥のボスの態度が軟化し始めました。ボスが大きなミスをして、私が自ら申し出てフォローしたところ、戸惑うような表情をしながら、感謝の言葉を述べてきたのです。それから、徐々にイヤミの回数が減り、3か月後には別人のように親切な先輩になりました。さらに、半年後には派閥自体が縮小方向に向かいました。もう片方の派閥のボスが、別の会社に転職することになったからです。同時に険悪なムードも影をひそめ、快適な職場へと変化し始めました。「1年で改善する」と言われたのが、かなり早まったのは、もしかしたら水晶のおかげかもしれません。あれからずっと水晶を友人のように大切な存在だと思っています。