バイト先での人間関係が上手くいかなくて、食欲が落ちるほど悩んでいました。非正規という理由で、年下の社員に舐められて、誰でもできるような仕事ばかり押し付けられていたのです。話し合いをしたくても、ハナから見下されているので、相手にされません。打つ手なしで、途方に暮れていたとき、街なかで占いの館が目に入りました。
占いの館は普通の小さなビルの一室でしたが、直感的に「ココで相談しよう!」と思いました。何名か占い師の方が在籍していて、特に指名したい人はいないと告げると、一人のおばさん占い師の前に案内されました。バイト先の人間関係で悩んでいると告げると、占い師さんは私の目を静かに見つめて、「アンタ、付き合っている男がいるでしょ。その男が悪いんだよ」と言ったのです。仕事の相談をしているのに、なぜか恋愛の話が出てきて不思議でしたが、確かに付き合っている彼氏がいたので、「そうなんですか」と答えました。「こんな、ひどい男と付き合っているから運が落ちるんだよ」と少し冷ややかな目で私を見ます。確かにダメンズ一歩手前のような人でした。3年ほど付き合っていた彼氏とは半同棲状態でしたが、私がもういい年なのに結婚を決断してくれません。しかも、仕事も続かない人で、色々、中途半端でした。占い師さんにそう言うと、「その彼氏とハッキリさせないと、アンタは何もかも上手くいかない」と言われました。バイトの件とは別に、彼氏との仲については、今のダラダラした関係をどうにかしなくてはと思っていました。それで、思い切って彼氏に結婚の意志があるか尋ねたのです。すると、少し考えた表情をした後、「結婚しよう」と言ってくれたのです。何度も別れようと思った人ですが、その言葉を聞いて「やっと、決心してくれた!」と思いました。うれしくて、親や周囲の友人に報告しましたね。
が、それからわずか1カ月後に、喜びが一気に覆されました。結婚が決まったと報告した女友だちの一人からある夜、呼び出され、「これ、アナタの彼氏じゃない?」とスマホの画面を見せられたのです。そこに表示されていたのは、出会い系らしきサイトで、プロフィールから私の彼氏に間違いないと思う人物が「彼女募集中」とPRしていました。登録はほんの3週間前。私にプロポーズした直後でした。しかも、友人も登録していて、彼氏からメッセージが来たと言います。私の友人だと知らずに、送ったのでしょう。「彼女と別れて1年。寂しいので、気が合いそうな女性を探しています、etc」という内容でした。気が動転しました。友人は彼氏に興味がなさそうでしたが、私を心配してくれて、「一旦、興味があるフリをして、返信して、結果を報告しようか?」と提案してくれました。そして、お願いしたのですが、友人が彼氏に私とつながっていることを伏せて、メールを返したところ、「いますぐにでも会いたいです!メールの文章から素敵な人だとわかります!」とハートマーク入りのメールが返ってきたのです。
彼氏に問い詰めたところ、白状しました。何度も「悪かった」と平謝りしてきましたが、私の怒りはおさまりません。仕事とお金にはだらしなくても、女性に関しては一途な人だと思っていたからこそ、耐えてきたのに、陰でこんなことをしていたとは。別れを告げました。翌日からは仕事一筋です。例の年下の社員との悶々とした関係は相変わらずでしたが、それ以上に失恋のダメージが大きく、とにかく目の前の仕事を精一杯こなしました。すると、徐々に売り上げへの貢献度が大きくなって、周囲が私に優しい態度で接するようになったのです。年下の社員も、です。しかも、なんと、私の働きぶりを見た同業他店から正社員登用の話をいただきました。好条件の引き抜きで、迷うことなく承諾しました。転職後はさらにスキルアップでき、店長にまで昇格できました。思えば、バイト時代は彼氏のスケジュールに合わせて、シフトを組まされていたし、勉強したくても、遊び好きな彼氏の趣味に付き合わされてばかりでした。彼氏と別れたことで、運が好転しました。占い師さんが言ったことは当たっていたとしみじみ思います。