長年、不倫のカレについて相談している駅前の占い師さんがいます。占い師さんは60歳位の女性です。奥さんと離婚すると言いつつ、別れないカレのことを相談するたびに、「もういい加減、別れたほうがいいわよ」と言われていたのですが、決心がつきませんでした。
性格面でも肉体面でも相性抜群で、二人で過ごすために借りた部屋の家賃もカレがきちんと払っていたのです。奥さんとはただの同居人の関係だと言うし、子どももいないので、いつか私のために別れてくれると思っていました。占い師さんいわく、カレと私は相性が確かにいいけれど、カレは自己愛が強いタイプで、私のことを本当に真剣に考えているわけではないそうです。
けれど、ある日、カレがついに決心の言葉を口にしたのです。「妻にハッキリ話して、離婚できるようにする」と。私はうれしくて涙が出そうになりました。その後、カレに会うたびに「妻ももう先がないと理解している」「離婚に同意してくれそうだ」という言葉を聞きました。「やっと、オマエを幸せにできる!」カレに抱きしめられ、心底幸せでした。
そして、喜びにあふれていた、ある日のこと、私に妊娠の兆候がありました。うれしくて、カレにそれを告げると、途端に態度が変わったのです。「絶対に産むな」と言い、冷淡な目で私を見ます。「結婚できるのだから、産みたい」と言うと、離婚話なんて一切進んでいないことを白状しました。私は半狂乱になり、そこら中のものをカレに投げつけたのですが、カレは「もう、終わりにするか」と言っただけでした。私は一人で部屋に残され、絶望的な気分を味わっていました。しかし、不幸中の幸いだったのは、妊娠が間違いだったことです。私は気を取り直して、また占い師さんのもとに行きました。
占い師さんは「妊娠もしていなかったし、おかげで、カレの本性がわかったのだから、アナタにとってはむしろ幸せな出来事だったのですよ」とおだやかな目で言いました。占い師さんはしばらく恋愛をしたい気持ちを抑えて、仕事を頑張るようにとアドバイスをくれました。言われたとおりに、一心不乱に仕事に打ち込んでいたところ、取引先の営業マンに見初められ、プロポーズされたのです。今は幸せな生活を送っています。